リアライズブログ

多様なエンターテイメントが出現して本があまり売れない時代となりましたが、本を読む習慣を持つことは大切なことだと思います。文芸作品を中心にジャンルを問わず読んだ本を紹介していきたいと思います。

歴史小説1冊目 「八本目の槍」今村翔吾(新潮社)

歴史小説でこんなに号泣したのは初めてです。
これからも繰り返し読んでみたい。
そう思えるくらい感動しました。


作者の今村翔吾さんは1984京都府出身。
「火喰鳥」で2017年にデビューし、数々の歴史・時代小説を書いていて、「八本目の槍」は第8回野村胡堂文学賞を受賞しました。

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僕は日本史、世界史どちらも興味があるので今までも数多くの歴史小説を読んできました。


特に戦国時代を舞台にした小説は戦場で武将たちが槍や刀を奮って戦う躍動感や、戦略・戦術を駆使した駆け引きの描写にワクワクしたり高揚感を覚えたりするので大好きです。


この小説も最初はそんなワクワクを感じたくて購入しました。
ですが、いい意味で期待を大いに裏切られました。
こんなに泣けるストーリーだったとは。

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この物語は賤ヶ岳の戦いで一番槍の武功をあげて天下にその名を轟かせた7人の武将、加藤清正糟屋武則脇坂安治片桐且元加藤嘉明平野長泰福島正則の生涯と彼等から見た石田三成の物語です。


彼等8人は少年時代に長浜城羽柴秀吉の下で小姓として勤め互いに励まし合い、切磋琢磨し友情を育んだ仲間でした。


賤ヶ岳の戦いでは武功をあげてそれぞれの名を天下に轟かせ、石田三成も彼等7人に次ぐ武功をあげて皆で称え合いました。


そんな少年たちもやがて成長して出世を遂げ背負うものが増えると対立し、関ヶ原では不幸にして敵味方に別れて戦う事に。


お互いを認め合いながらも敵味方に別れて戦った8人の武将たちの心情は?


この作品を読んで、むかし1990年代に放送された「愛という名のもとに」というテレビドラマを思い出しました。


大学時代にボート部で切磋琢磨した仲間たちが社会に出て揉まれて変わっていくけれど、みんなで集まればあの頃に戻れるという。


「八本目の槍」でも、大人になってそれぞれの道を歩んで疎遠になっていた頃に秀吉に8人が呼び出されるシーンがあります。


この頃には出世にも差が出ていて官職や治めている領地によって心にもギクシャクしたものがお互いに在りますが、やがて打ち解けてあの頃のように名前で呼び合い笑い合います。


また、この作品の重要なシーンとして小姓時代に8人で、石田三成が以前小僧として修行していた寺の境内にある大杉に願掛けに行く場面があります。


作品の中でも鍵になる重要なシーンなのですが、石田三成がすでに小僧時代に願掛けを済ましていてその願いがすでに叶っていると言います。


クールで冷たい印象の石田三成が掛けそうもない内容だったのでとても泣けました。


関ヶ原の戦いの時は不幸にして敵味方に別れて戦い、特に加藤清正福島正則加藤嘉明は反石田三成の急先鋒として戦いましたが、実はお互いを認め合っていて心のどこかで繋がっている。


この作品では他にもミステリー的な要素もあって、石田三成は処刑される直前に徳川家康が10年は身動き出来ない呪詛をかけたという謎の言葉を残します。


それが一体何なのか。


この謎を解いて石田三成の意思を継ごうと奔走するのが、三成と最も仲が悪く8人の中でも一番頭が悪かったはずの福島正則だったから余計に泣けます。


8人揃えばあの頃に帰れる。
戻る場所がある。


僕も疎遠になっている学生時代の友達に久しぶりに連絡してみたくなりました。


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