
「仕事を辞めたら終わりだ」
「今さら転職なんて無理だ」
「この年齢で新しいことを始めても遅い」
就職氷河期世代の僕たちは、若い頃からそう思い込まされてきました。
給料は上がらない。ボーナスも退職金もない。非正規のまま年齢だけ重ね、老後資金や親の介護、病気や孤独死の不安ばかりが増えていく。
それでも、「ここで辞めたらもっと悪くなるかもしれない」と思って、苦しい職場にしがみついている人は多いと思います。
でも、本当に危険なのは「逃げること」ではありません。
苦しい環境に慣れすぎて、動けなくなることです。
僕は中学生のころ、軟式テニス部に入っていました。
学校の運動場の端にあるテニスコートで毎日練習していたのですが、9月の半ばか終わり頃だったと思います。
まだ日差しは強いけれど、風だけは少し秋らしくなってきた昼下がり、ふと青空を見上げると、ものすごい数の赤とんぼが飛んでいました。
それは数匹や数十匹ではありません。
空いっぱいに、まるで赤い川が流れていくように、無数の赤とんぼが山の方から海の方向へ飛んでいったのです。
石川県は日本海側なので、南側に山が見えます。
つまり赤とんぼたちは、山から平地へ、そして海の方へ向かって飛んでいました。
その光景は数分だったのか、もっと長かったのか覚えていません。
ただ、後にも先にもあれほど大量の赤とんぼの群れを見たのは、そのとき一度きりです。
子どもながらに「生きものってすごいな」と思いました。
大人になってから知ったのですが、あの赤とんぼはおそらくアキアカネだったのでしょう。
アキアカネは春に田んぼや池で生まれ、ヤゴとして育ちます。
初夏に羽化すると、真夏の暑い平地を離れ、標高1000メートル前後の涼しい高原や山地へ移動します。
なぜそんなことをするのか。
理由は単純です。
暑すぎる場所にいたら死ぬからです。
アキアカネは弱い昆虫に見えますが、同じ場所にしがみつきません。
自分にとって生きやすい場所へ移動します。
秋になって気温が下がると、再び平地へ戻り、田んぼや池で産卵します。
もし真夏に平地で産卵してしまうと、卵が早くかえりすぎてしまい、冬が来る前にヤゴが死んでしまいます。
だから、涼しい場所へ逃げ、時期を待ち、一番生き残りやすいタイミングで戻ってくるのです。
この「渡り」は、就職氷河期世代の人生にもかなり参考になります。

僕たちは若い頃、「正社員になれ」「一つの会社にしがみつけ」「辞めるのは根性がない証拠だ」と教えられてきました。
でも現実には、会社が倒産したり、給料が上がらなかったり、ブラック企業で体を壊したりして、「その場に残ること」が正解ではない時代を生きてきました。
僕自身、10年以上ブラック企業で働きました。
朝起きても体が重く、出勤前から疲れていました。
休日は何かを楽しむ元気もなく、昼まで寝て終わる日ばかりでした。
常に眠い。常にだるい。何をしていても楽しくない。
それでも当時の僕は、「仕事を辞めるのは逃げだ」と思っていました。
まだ終身雇用の考え方が残っていた時代でしたし、一度辞めたら人生が終わるような気がしていたのです。
でも、実際には逆でした。
本当に危なかったのは、壊れるまで我慢したことです。
僕の周りにも、心を病んだ人、うつ病になった人、職場で突然来なくなった人、自ら命を絶ってしまった人がいました。
あのまま我慢を続けていたら、自分もどうなっていたかわかりません。
アキアカネは、暑い場所に居続ければ死にます。
だから移動します。
人間も同じです。
今いる職場、今いる人間関係、今いる環境が自分をすり減らすだけなら、逃げることは敗北ではありません。
それは生存戦略です。
では、就職氷河期世代は具体的にどう動けばいいのでしょうか。
まずは、低賃金の業界から抜け出す準備です。
運送、警備、介護、倉庫など、人手不足なのに給料が上がりにくい業界にいるなら、資格を取って別の仕事に移る準備をしたほうがいいと思います。
たとえば、
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フォークリフト → 数日で取得でき、倉庫や工場で需要が高い
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危険物乙4 → ガソリンスタンド、工場、ビル管理などで使える
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第二種電気工事士 → 40代、50代でも比較的転職につながりやすい
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宅建 → 不動産業界や管理会社で活かせる
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介護福祉士 → 介護現場で待遇改善につながる場合がある
資格は人生を逆転させる魔法ではありません。
でも、今より少し条件のいい場所へ移るための切符にはなります。
次に、生活コストを下げることです。
アキアカネが暑い平地を離れて高原へ移るように、人間も生活しやすい場所へ移ることが大切です。
都会で高い家賃を払い続けるより、地方都市や郊外へ移れば、家賃が月3万円から5万円下がることもあります。
僕も家賃7万円のマンスリーマンションから築40年家賃4万円のアパートに引っ越しました。
月3万円違えば、年間36万円です。
10年なら360万円です。
無理に収入を増やすより、固定費を下げたほうが楽になる人も多いと思います。
そして、一つの収入源に依存しないことです。
会社の給料だけに頼ると、その会社が傾いた瞬間に人生ごと傾きます。
だから、小さくても副業を持つ。
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ブログ
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NISA
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高配当株
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不用品販売
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フリマアプリ
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動画編集
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ライティング
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ポイ活
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アフィリエイト
最初は月1000円でもいいと思います。
給料以外からお金が入る経験をすると、人は少し強くなれます。
それもまた、アキアカネ型の生存戦略です。
人間関係も同じです。
職場だけの人間関係に依存すると、その職場が苦しくなった瞬間に逃げ場がなくなります。
SNS、趣味、地域活動、投資仲間、ブログ仲間。
そういう別の居場所を持つと、人はかなり楽になります。
就職氷河期世代は、「耐えること」を教え込まれてきました。
でも、これから必要なのは耐久戦ではありません。
移動戦です。
ここで頑張ることではなく、どこなら少し楽に生きられるかを探すこと。
若い頃の失敗は取り返せなくても、今いる場所を変えることはできます。
40代でも50代でも遅くありません。
赤とんぼは、自分に合わない場所にしがみつきません。
苦しい場所から飛び立つ。
それが、アキアカネの生存戦略です。

へんぴでも 涼しい場所に 活路あり
















